1日目
一ノ越から黒部ダムへ向かう
元々は雷鳥沢でもう1泊して立山を登る予定だったが気が変わり、一ノ越から下山することにした。こういうのは単独行の良いところであり悪いところでもある。
浄土山南峰までは昨日通った道。昨日と同じように獅子岳付近の花に感激し、雷鳥にもまた会うことができた。雷鳥の多いところだ。丹沢の鹿は猟期になると鳥獣保護区に移動してくるというが、雷鳥も危機回避のため人の近くにいることを選択しているのかもしれない。
一ノ越から黒部ダムまでの道は、東一ノ越までは何の問題もなく、と言いたいところだけど、東一ノ越手前に一箇所あった雪渓が恐怖だった。
東一ノ越から先は、だいぶ前に整備されたあとそのまま放置されているような感じを受けたが、道筋はしっかりしていて迷うところは(一部雪渓を除いて)ないし、タンボ平付近の草木密集地帯は広く草刈りがされていた。
問題は岩の段差で、北八ヶ岳のように大きい岩を乗り越えていくところはないけれど、細かい段差が延々と続き、膝を気にする身にはかなりつらかった。また、蒸し暑く単調な樹林帯歩きもこたえる。
この区間の雪渓は東一ノ越から2〜30分くだったところに一箇所あっただけだったが、夏道を覆ってしまっていたので道を見つけるまで少し迷った。この区間を初めて歩く場合は時期を考えた方がいいと思う。
歩いている最中は、もうここは二度と歩かない、早く降りてしまいたいとばかり思っていて、降りた後も同様だったが、考えてみたらこの角度から見る獅子岳、鬼岳、龍王岳への連なりと立山の姿はここに来ないと見れないもので、それは何度も足を止めて見惚れるものではあった。
3:33 テント場
4:16 ザラ峠
5:32-5:53 獅子岳
7:18 浄土山南峰
7:43-7:55 一ノ越山荘
8:58-9:06 東一ノ越
10:57 黒部平
11:41-11:47 ロッジくろよん
12:16 黒部ダム駅
距離:14.2km 累積標高:登り734m 下り1703m 水は2Lぐらい飲んだかな。タンボ平の辺りは蒸し暑いので多めに持った方がいい。
天気は曇りと晴れ。
19時過ぎに抗いがたい眠りに落ち、しゃきっと目覚めたのが20時過ぎ。もう毎回このパターンで、それからなかなか寝付けないのもいつものことだ。再度眠りに落ちたのは0時ごろ。そして1時50分に目が覚めた。
トイレに行って水場で歯磨きと水の補給を済ませ、撤収にかかる。簡単に食事を済ませ、コーヒーを飲む。気温は10度。寝巻きのウール混長袖の上にウインドブレーカーを羽織り、3:33出発。あたりは冷ややかな霧に覆われている。
ザレの途中で変な生き物に遭遇。木かとも思ったがストックでちょんと触ってみたら小さな2本のツノがぴゅっと引っ込んだ。ナメクジか? でもこんな黒くて10センチくらいはあるナメクジなんて見たことがない。なんだろう? こんなところにこんな生き物がいるんだなぁ。
ザレた登りが一段落した辺りからのお花畑に、昨日同様圧倒される。
5:32 獅子岳到着。ライトや上着をしまい、岩に腰掛けパンを食べてから出発。
降りていったところで二羽の雷鳥が盛んに土っころを突いていた。朝飯か? ほんとに雷鳥が多いところだ。ほとんど情報を入れてなかったのでこんなに雷鳥が多い山域とは知らなかった。昨日この辺りにいた雷鳥かな? 奥のはまだ子供だ。目が可愛い。
室堂側の景色はやはり素晴らしく、何度も足を止めた。でも奥に見える雷鳥沢のテント群に少しうんざりする。一ノ越から下山しようかという気持ちが湧き上がったのはこのあたりだった。いやいやいくらなんでもそれはないだろうとすぐに打ち消しにかかったが、その気持ちは徐々に確固たるものになっていったようだ。
雄山に取り付く多くの人の姿もうんざり感に拍車をかける。眺めは素晴らしいんだけど。
7:43 一ノ越山荘。コーラを購入したついでに東一ノ越方面の道の様子を訊ねてみたが若い男の子はよくわからない様子。隣にいた人が、落ちたって話は聞かないから大丈夫じゃないですかと言ってきた。なるほど。
とりあえず座って考えるかということで、東一ノ越方面を見おろす椅子に腰掛け行動食を食べる。
すっかり天気は良くなり絶好の山日和だしバス代だって勿体無いじゃないかと自分を説得するが、気持ちの芯は固まっているようで動かされなかった。
降りると決めると心が軽くなった。晴れやかな気持ちで東一ノ越への道に入る。
獅子岳付近ほどじゃないが花は多く、ここまであまり見なかったこの赤い花が印象に残った。
龍王岳。
草木が覆いかぶさる区間は谷側が切れてるところがあるので注意。
時々振り返って見る景色に釘付けになる。登りだとこの景色を眺めながらになるのか。
鬼岳と獅子岳。こっち側から見る龍王岳、鬼岳、獅子岳の連なりはすごくかっこいい。
鬼岳の雪渓を渡る人が見えた。 ↓
あんなとこ歩いてたんだな。
そして東一ノ越まであと少しというところにあった恐怖の雪渓。
短いけど滑ると下まで一直線だ。明確な道跡のようなものはないが良く見ると靴跡が見えたので靴のままで歩いた人がいたようだ。僕にはその度胸はないし技術もない。
8:58 東一ノ越。
ヤグラ跡? 小屋跡?
ここで龍王岳、鬼岳、獅子岳は見納めとなる。
これから下る方を見下ろすと黒部平駅が奥の方(写真右上)に見えていて、これならすぐじゃないかとこの時は思ったけれどここから長かった。特にタンボ平の辺り。
ザレて滑りそうなジグザグ道を10分ほど下ると、山と高原地図では基点になっている雷殿分岐に着く。といっても雷殿への道は崩落で何年も通行止めになっていて、これからこの道が修復される見込みはない。
標識も倒れているし休めるところでもないので東一ノ越を基点にしたほうがいいと思う。
右に見えているのが登山道を覆っていた雪渓。
その雪渓に差し掛かったところ。
奥の方に穴が空いていたので迂回して向う岸に渡ったが道跡も目印もない。きょろきょろ見渡すと、元の岸の下流側に道が見えたのでまた渡り返した。
この写真だけ見ると気持ち良さげだけど結構段差があって歩きにくい。
ここはちょうど道上の雪が溶けていたので良かった。もう少し早い時期だとどうなんだろう。
こんな風に草木が繁っているところも少しあったけど道ははっきりしている。
それに黒部平に近づくにつれ草刈りがされているところも多くあった。
ときどきこんな景色も望めるが大半は視界のない樹林帯の中。
ロープウェイが行き来する音や駅のアナウンスも聞こえだし、ロープウェイが行き来する様もたまに見えるんだけどそこからが長い。
岩の段差がなくなって歩きやすくなったな、というところでやっと黒部平の分岐に到着。
真っ直ぐ行くとケーブルの駅で、へとへとだったのでよっぽどケーブルカーに乗ろうかと思ったが、今を逃すともうここに来る機会はないかもしれない。あと少し! と気持ちを奮い立たせ歩き通すことにした。
途中大木が立ち並ぶ地帯がある。
ブナも目立ってくる。そういえばこの辺はブナの多いところだった。
やっとロッジくろよんに出た。自販機でポカリを購入し飲み干す。
黒部ダムから立山方向を何度か振り返ったが、降りてきた道筋は小山に隠れて見えずちょっと残念。
でもあの奥からここまで歩いてきたんだなと思うと、良くやったと自分に言いたくなる。
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