材木尾根には御題目尾根という呼び名もあり、今はそっちのほうが主流のようだ。
『山口耀久著/八ヶ岳挽歌』のなかでは材木尾根とされていて、
"「鉄道省山岳部編/日本山岳案内12八ヶ岳火山群」では御題目尾根になっているが、権現岳は日蓮宗と特別の関係はない"
というような記述がある。僕は前に読んだこの文章が頭に残っていて、自分の中では材木尾根と呼んでいた。
北村宏さんという、地元在住で八ヶ岳について丹念に調べられている方の著書、『八ヶ岳、もう一つの魅力/くらフォーラムin八ヶ岳編』では御題目尾根と呼ばれていて、その中には、
”昭和二、三年ごろから八ヶ岳の主な峰に日蓮宗徒が法華経を祭祀したと言われる”
との記述が見られ、それなら御題目尾根もありなのかなとも思うが、僕も日蓮宗とは特別な関係はないので材木尾根と呼ばせてもらおう。
材木尾根は、今は廃道になっている権現岳へのかつての五つの登路(材木尾根、御神楽尾根、中尾根、大日向尾根、十二山尾根)のうちではダントツに歩かれているようで、検索すると他はひとつふたつほどしか出てこないが、この尾根だけは3ページ分ほど出てくる(御題目尾根で検索した場合。材木尾根だと2ページ分くらいしかない)。
それにこの1年ほどでだいぶ山行記録が増えたような気がする。山行記録が多い、距離が短い、遺構がある、などが理由だろうか。
一般的なのは、天女山から八ヶ岳横断歩道をしばらく歩き18番標識から材木尾根に入るコースで、目を通した全ての記録がそのルートだったが、今回は材木尾根を歩くこと自体が目的で三ツ頭まで行く気もなかったので、もっと下の八ヶ岳高原道路から登ってみることにした。
取付けそうなところあるかなと、家でグーグルマップをこつこつ見ていると、尾根の縁に沿って道らしき溝が見えた。おおっ?
それを追って北上していくと、車が入れるように均された平らな場所を発見。さらにその奥には踏み跡らしきものが見える。よしここだ。
取付き 8:32 - 八ヶ岳横断歩道18標識 9:49 - 登山道合流 11:06 - 11:31 前三ツ頭 12:08 - 天女山 13:32 - 14:23 甲斐大泉駅
甲斐大泉駅に降りてタクシーに乗り込む。この駅には常駐してるようだ。
道らしき溝が見えた付近で降ろしてもらう。
なだらかなところなのでここからすぐに尾根へ上がれそうだけど、グーグルマップで見た取付きが気になっていたのでそこへ向かうことにした。
そびえ立つ前三ツ頭が見え、愕然とする。あそこまで歩くのか…。
グーグルマップで見たとおり道らしき溝が見えた。
写真がわかりにくいが、ここが入口だ。グーグルマップだともっとはっきりしている。
取付きから18番標識
1420m付近で道がなくなってしまったため1500m付近までは笹の中を歩くことになったが、背丈が低いので苦労しなかった。
1500m付近から八ヶ岳横断歩道へ至るまでの区間は、登山地図には出てないが整備された道がとおっている。推測だけど仙人小屋辺りからちゃんとした登り口があるんだと思う。
取付きから入るとすぐに道が右と左に別れた。左は沢状の窪みへ伸び、右はグーグルマップで見た道が伸びている。右へ向かってみた。
来た方へ戻るように尾根の縁に沿って進んだあと、道は北東に向きを変える。しばらくしてさっきの取付きの少し上に出て、そこから続いてきている踏み跡と合流した。
なんだ最初左に行っておけばよかったんだな。
林業のものと思われる踏み跡がいくつか交錯し、何度か踏み跡を乗り換えながら上を目指していく。
が、1420m付近で唐突に道は終わってしまった。
ここからは笹の中を歩くことになる。
でも膝くらいの高さなので歩きやすい。
道は無いけれど、境界杭、切り倒された木、そしてペットボトルを見た。たまに山仕事の人は入るんだろう。
突然南東から上がってくるはっきりした道に出た。1500m付近。
そうかちゃんとした取付きがあったのか。仙人小屋の辺りかな。
ここからはしっかり整備がされた普通の道となった。
登山地図には出てないが(描こうとしても多すぎてたぶん描ききれない)、このカラマツの植林帯の中にはこういう道がいくつもとおっている。
もうそろそろ八ヶ岳横断歩道に合流するという辺りで展望台と書かれた標識が出てきた。上に行けばいくらでも展望はあるので寄らずに進む。
目的地の前三ツ頭が見えた。まだまだ遠い。
すぐに八ヶ岳横断歩道に出た。
17番標識が立ち、来た方を指して八ヶ岳高原ラインCと書いてある。
横断歩道で100m程高度を上げ、18番標識に到着。
そのままこの写真の後ろに広がる草地へ真っ直ぐ進む。
18番標識から前三ツ頭
八ヶ岳横断歩道18標識から入ってしばらくは踏み跡がはっきりとあり、テープも豊富についていたが、上に行くにつれ踏み跡は薄くなった。鉄剣のある2100m辺りからは傾斜がきつくなるうえに砂礫に足を取られなかなか思うように前に進めない。消耗を強いられるところだ。
登山道に合流する直前の大岩が連なっているところは踏み跡とテープが導いてくれる。
十二山尾根と同じように砂礫が印象に残る尾根だが、十二山尾根よりは数段楽で歩きやすかった。
18番標識から入ってすぐに観音像に出くわした。
出合観音と呼ばれているようだ。
踏み跡ははっきりしていて、テープも多くある。
岩の上の石仏。
左奥に祠がある。
最初の樹林帯を抜けたあとは樹林帯と砂礫帯を縫うように進んでいく。
砂礫地ではえぐれた踏み跡を見たが、鹿の足跡っぽくもあった。
傾斜が増してきてきつくなりだした頃、遠くに大岩に刺さっている鉄剣が見えてきた。
おおあれか、と気がはやるが、砂礫で傾斜も増してくるのでなかなか思うように足が進んでくれない。
やっと鉄剣についた。よく今まで無事に残ってたもんだ。雷落ちたりしないのかな。
鉄剣を過ぎるとさらに傾斜が増し、踏ん張りが利かず、ずるずるずるずる滑ってきつかった。
樹林帯にたどりつき、しばらく進むと大岩の連なりが立ちふさがっていたが、明確な踏み跡がありテープもついていた。真ん中付近を抜けていったと思う。
登山道へ合流。
このすぐ上に、ここがいちばんきつい、と書かれた看板が建っていた。
辺りにイワカガミの咲く岩に腰かけ、十二山尾根を見下ろしながら昼食を摂った。
当初はここから十二山尾根をくだる計画だったが、この日は微熱があって体調が悪かったので無理をせず天女山登山道を下ることにした。歩いたことがないのでいい機会だ。
でも天女山登山道はけっこうな急坂だった。
最初は飛ばし気味だったが、これは膝を悪くすると思い途中から慎重に下るようにした。読売新道の辛い記憶が頭をよぎる。
でもそれも1900m付近で終わり、そこからはなだらかで歩きやすい快適な道になった。
天女山を通過し舗装路に合流。そのまま甲斐大泉駅まで歩く。
これで五つの尾根のうち両端を登り終えた。あとは御神楽尾根、中尾根、大日向尾根の三つだ。次はどれを登ろうか。
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