薬師峠から黒部五郎へ向かうなだらかな道。
黒部五郎岳への登りと黒部五郎小屋から稜線に出るまでの二箇所が急登だったが、あとはとても気分のいいゆったりとした稜線を歩くことができた。
2日目
薬師峠 3:29
北ノ俣岳 5:17 − 5:36
中俣乗越 6:36
黒部五郎岳 7:57 − 8:05
黒部五郎小屋 9:29 − 9:58
三俣山荘 12:06
行動時間:8時間37分 歩行時間:7時間30分
最低気温10度 最高気温20度
4日間の最終日を除けば、距離は一番長いが一番楽な日でもあった。
2時にセットした目覚ましが鳴る前の1時半過ぎに自然に目が覚めた。
2時に寝袋から出て、昨夜の残りのアルファ米に味噌汁をかけて食べ、コーヒーを飲み、撤収にかかる。
気温は10度。手袋をしなくてもいいし、マットも寝袋もすぐ仕舞えるし、暖かい時期はほんと楽でいい。
空いっぱいに星が散りばめられている。満天の星空だ。テン場から早く出て一人でじっくり空を眺めたい。
3:29出発。少し肌寒いが、風も無いので半袖で歩きだすことにした。
太郎兵衛平からの富山市街の灯り。
流れ星をいくつも目にした。道沿いに目を凝らすと草原の中に池塘があるのが分かる。すごくいいとこを今自分は歩いてるんだろうなぁ。
時々ライトを消して立ち止まって景色や静寂を味わった。肌寒さも心地よく感じる。
完全にライトを消したのは4時半頃だっただろうか。このライトを消せるか消せないかの微妙な明るさがいい。
朝はやはり特別で神聖な時間だ。普段でもそう思うから山だとなおさらで、この時もとても幸せな気分だった。
中俣乗越へ下っていく。
池塘って近くで見るより少し離れて見る方がいいかも。
ハイマツの海の中を通る道の先に黒部五郎が迫ってきた。ここから標高差300mちょいの登りだ。
急登なので時々足を止めて景色を眺める。
薬師岳は東西から見た形とは当たり前だけどだいぶ違う。大月の扇山みたいだ。
朝の光が当たって地形が入り組んでいるのがよく分かる。
これは歩いてきた稜線。
奥に小さくぽこっと見えてる山の手前の鞍部が、今日の出発点の薬師峠だ。近く見えるけどここまで3時間くらいかかっている。
黒部五郎岳の肩に到着。ここにザックを置いて往復する人がほとんどだ。僕もそうした。
7:57 黒部五郎岳着。
山頂に可愛い彫り物があった。後ろは雲ノ平と水晶岳。雲ノ平山荘も左に小さく見えている。
右の斜面にカールへ降りるジグザグの道が見えているが、かなり急だ。
カールを見下ろす。
右奥に黒部五郎小屋が見えてて、こりゃ小屋まで1時間かからないんじゃないの?とか思ったけど.・・・
写真右から真ん中へ伸びている稜線にも道があって、歩くと気持ちいいだろうなと思ったが、今日は初めて来たので評判のいいカール内の道を歩くことにしていた。
肩まで戻り、ちょっと稜線を歩いた後、さっき上から見た急な道をカールへと降りていく。
やはり登ってくる人は皆一様にきつそうな表情をしていた。
カール内は岩がゴロゴロしている。小沢が幾筋も流れ込んでいて穏やかなところだ。
花が期待したほど無かったのが残念。7月がいいんだろうか? 暖冬だったのもあるのかな。
樹林帯に入ろうかという辺りでもよおしてきてしまった。
樹林帯に入ればキジを打つ場所には苦労しなさそうだけど、出来ることならトイレでしたいので早足で歩いたが、なっかなか小屋が見えてこない。
さっき上から見たときはすぐ着けそうだと思ったんだけど・・・
なんとか一旦抑え込んだら楽になったので、ほっとして歩いてるうちに小屋が見えてきた。池塘が点在した草原の中というすごくいい場所に建っている。
真ん中右端に小屋がある
9:29 小屋着。第二波の兆しが表れていたが無事間に合った。三俣方面に小屋を回り込んだところにトイレがあり、すごく綺麗だった。
小屋横のベンチに座って黒部五郎方面の景色を見ながら中食を摂る。
山頂から小屋を見ると近く感じたが、ここから見ると時間相応の距離に見えた。
小屋の前の水場で水を補給し、先へ進む。
樹林帯の岩ゴロの急登を我慢の登りだ。10時を過ぎ気温も上がってきて暑かった。
今までなんども眺めたあのカールを歩いてきたんだなぁと感慨が沸き起こる。
次は稜線沿いの道を歩こう。絶対気持ちいい道だと思う。
そして樹林帯の急登を抜けたら解放感のあるハイマツの道になった。人もそんなに歩いてなくていい感じだ。爽快な気分。さっきの樹林帯の急登がいいアクセントになったんだと思う。
しかし日差しが強く熱い。灼かれる。気温は20度くらいだけど、屋根の上をずっと歩いてるようなもんだからな。
右奥が三俣蓮華だ。一度登ったのでいいやと、最初から巻道を行くつもりだった。
巻道に入る。鷲羽が見え始めた。
というか、これまでずっと見えてはいたけどしょぼかった。あれ鷲羽だよなぁ...しょぼいな...という感じだった。しかしここからは違う。
雪がちょっとだけ残っていた。
この雪渓に降り立っとところで一瞬どっちに行くんだ? と迷ったが、対岸に標識が見えた。
鷲羽のドヤ顏っぷりがすごくなってきたがこれは認めざるをえない。
今日のフィナーレとして申し分ない眺めだ。
テン場が見えてきた。まだ12時前だが今日はここまで。
上から見ると全然空いてるように見えたが、小屋に近い方は埋まっていたので上部の個室に張ることにした。
小屋まではちょっと歩くが、もたもたしてると埋まっちゃうし。
ちょうど12時でお腹も空いていたので、とりあえず場所だけ確保し食堂へ行き、カレーを注文。ほとんど待たずに注文も食事もできた。
去年あった鹿肉ジビエ丼は無くなっている。鹿肉の供給が安定しないのかな?
昼食後テントの受付に行くと、玄関で小さい女の子がぎゃんぎゃん泣きながら受付の女の人に訴えかけていて、その女性には見覚えがあった。3年前に赤ん坊を背負ってた人だ。多分ここのお嫁さんだろう。てことはこの大声で泣いてる子がその時の赤ん坊だろうか。
へぇ~と思ったが、大きくなりましたねとかとても声をかけれる雰囲気じゃない。受付はテント、小屋泊まり、買い物の客でごった返してるのだ。女の子もいくら大声で泣いても全く相手にされていない。受付で並んで座っているバイトの男の子は魂が抜けかけ、というより抜けきってしまった表情だ。お金を稼ぐって大変だ。
テン場に戻りビールを飲みながら鷲羽を眺めて過ごす。
あれを明日登るのかと思うと憂鬱だ。思えば3年前に来た時も、あれを登るのか〜…と思いながらビールを飲んでいたなぁ。
でも真っ暗な中、源流へ降りていって谷間で朝を迎える気には全くならないので登るしかない。う〜ん.....。まあ実際登ればそんなにきつくないんだけど。ジグザグ道だし。
明日は読売新道だ。3L分の水筒を持参していたが道中水場が無いので、500mlのペットボトルを2本買って4L持参することにした。水晶小屋の水を当てにするわけにはいかない。
これまでの経験や昨日までの様子で、日中の消費は3Lあれば充分で4Lあれば余裕のはずだ。もしビバークになっても1泊なら大丈夫だろう。
明日も今日と変わらず暑いだろうから、また2時に起きて、涼しい時間帯にある程度まで進んでおこう。
3日目:読売新道へ
1日目:薬師岳へ
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